第7話
中古パソコン屋の打ち合わせで決まったこと、AIに相手別の共有文を作ってもらった
打ち合わせで決まったことを、ChatGPTなどの対話型AIで相手別の共有文にする頼み方と例文を、コピーして使えるプロンプトつきで紹介します。
中古パソコン屋の打ち合わせ、終わったあとの「共有」が大変でした
前回は、打ち合わせの長い資料をAIに要約してもらいました。4コマでは、PCラッコが要約を縮めすぎて「会議」としか答えられずにいましたが、資料が読めるようになると、次に気になってくるのは打ち合わせが終わったあとです。決まったことを、社内のみんなに伝えなければなりません。第0話で洗い出した9つの困りごとのうち、7つ目に選んだのは「同じ内容の社内共有」です。
同じ決定事項を、相手を変えて何度も説明していた
中古パソコンの通販ショップでは、ひとつの決定が何人もの仕事に関わります。たとえば年末のセールが決まると、上司には結論と数字を報告し、パソコンを点検して商品にする担当には「どの商品を、いつまでに、何台くらい用意するか」を伝え、お客様からの問い合わせに答える担当には「セールの期間や対象について、聞かれそうなこと」を伝えます。
困っていたのは、中身は同じなのに、相手ごとに伝え方を変えて何度も説明していたことでした。上司にはチャットで短く、商品化の担当には口頭で詳しく、問い合わせの担当にはまた別のメモで。そのたびに一から書き直すので時間がかかりますし、3回目の説明では「告知を始める日」を言い忘れる、といった抜けも出ていました。後から「あの件、結局いつからでしたっけ?」と聞き返されることも、一度や二度ではありません。
決まったことを1つのメモにして、AIに相手別の共有文を作ってもらう
そこで、共有する文章づくりをAIに手伝ってもらうことにしました。やり方は、まず打ち合わせで決まったことを、自分で1つのメモに箇条書きでまとめます。そのメモと「誰に、何のために伝えるのか」をAIに渡して、相手ごとの文章を作ってもらいます。たとえば、次のように頼みました。
「中古パソコンの通販ショップで働いています。年末セールの打ち合わせで決まったことを、下のメモにまとめました。このメモをもとに、次の3人に送る社内チャット用の共有文を、相手ごとに分けて作ってください。
・上司:結論と日付・数字だけを3行以内で
・商品化(点検・出品)の担当:用意する商品と期限が分かるように、やることを箇条書きで
・問い合わせ担当:お客様に聞かれそうなこと(期間・対象・注意点)が分かるように
メモにないことは書き足さず、分からない点は「要確認」と書いてください。
(ここに決まったことのメモを貼りつける)」
返ってきたのは、3人分の共有文でした。上司向けは「期間・対象・告知開始日」の3行。商品化の担当向けは「対象のノートパソコンの出品をいつまでに終えるか」を先頭に置いた、やることの箇条書き。問い合わせ担当向けは「セール期間はいつからいつまでか」「対象外の商品はあるか」といった、お客様の質問に答える形の文章になっていました。メモに書いていなかった「送料の扱い」については、ちゃんと「要確認」と書かれていました。
同じメモから作っているので、3人に伝える日付や数字は自然とそろいます。言い忘れも起きません。
やってみて感じた、決定事項をAIに相手別の共有文にしてもらうときのコツは3つです。
- 決まったことは、先に自分で1つのメモにまとめてから渡す
- 相手ごとに「何のために知りたいのか」と、文章の長さや形を伝える
- 送る前に、日付・数字と、どの文章を誰に送るのかを確かめる
特に1つ目が大事です。AIが作るのはあくまで「伝え方」で、何が決まったのかは打ち合わせに出た人にしか分かりません。メモがあいまいだと、AIはそれらしい言葉で穴を埋めてしまいます。「メモにないことは書き足さない」「分からない点は要確認と書く」と一言添えておくのも、そのためです。2つ目は、同じ内容でも、上司は結論を、現場は段取りを、問い合わせ担当はお客様への答え方を知りたい、という違いをAIに教えるためのものです。3つ目は、次の4コマを読んでいただくと、なぜ大事なのかが分かると思います。
同じことを何度も説明しているのは、お客様向けの案内でも同じです。当店では、配送やお支払い、保証について特によく聞かれることを、よくある質問のページにまとめています。
なお、社外に出せない情報が含まれるメモをAIに渡すときは、社内のルールに沿って、使ってよいAIの範囲や伏せるべき情報を確かめてから使うようにしています。
共有にかかる時間が減って、聞き返しも少なくなった
この方法にしてから、打ち合わせのあとの共有は、メモを書いてAIに渡し、出てきた文章を確かめて送るだけになりました。相手ごとに一から書き直していた時間がまるごと減り、日付や数字のずれによる「結局いつから?」という聞き返しも少なくなりました。
一方で、AIが作った文章は、そのまま送らずに必ず一度読み直しています。言い回しが自分らしくないところや、相手との関係からすると少し堅すぎるところは、自分で直してから送る。共有文の下書きはAI、送るかどうかを決めるのは自分。この分担に落ち着きました。
……と、ここまではうまくいったのですが、「AIが作ったんだから、確かめなくても大丈夫」と調子に乗った仲間が、社内に一匹いたようです。
確かめずに「一斉送信」したPCラッコ
PCラッコも、打ち合わせで決まったことをメモにして、AIに相手別の共有文を作ってもらいました。3人分の文章が一瞬で出てきて大喜び。「こんなに早いなら、確認なんていらないよね!」と、読み直さないまま送信ボタンに手を伸ばします。
結果は、上の4コマの通りです。AIが作った3つの文章は、どれも正しく書けていました。間違っていたのは、どの文章を誰に送るか、の方でした。上司には商品化の担当向けの細かいやることの一覧が、問い合わせ担当には上司向けの3行が届いてしまったのです。AIは文章を作ってくれますが、送る相手まで確かめてはくれません。コツの3つ目を、身をもって確かめた一件でした。
コピーして使える、決定事項の共有文のプロンプト(頼み方)
今回AIに渡した頼み方の文面(プロンプト)を、ほかの打ち合わせや連絡でも使える形にまとめました。ChatGPTやGeminiなどの対話型AIに、〇〇の部分を書きかえて貼り付けてください。
プロンプト(AIへの頼み方の文面)
〇〇(何の打ち合わせ)で決まったことを、下のメモにまとめました。
このメモをもとに、次の人たちに送る〇〇(社内チャット・メールなど)用の共有文を、相手ごとに分けて作ってください。
・〇〇(相手1。例:上司):〇〇(知りたいこと・形。例:結論と日付・数字だけを3行以内で)
・〇〇(相手2。例:作業の担当):〇〇(例:やることと期限を箇条書きで)
・〇〇(相手3。例:問い合わせ担当):〇〇(例:お客様に聞かれそうなことが分かるように)
メモにないことは書き足さず、分からない点は「要確認」と書いてください。
(ここに決まったことのメモを貼り付け)
相手の名前は【 】で空けたままにし、個人の情報はメモに入れないのがコツです。できた文章は、日付・数字と、どの文章を誰に送るのかを確かめてから送りましょう。社外に出せない情報を含むメモは、社内のルールで使ってよいAIの範囲を確かめてから渡してください。
この記事(と4コマ)自体、実はAIを徹底活用して作っています
種明かしをしておくと、この連載記事と4コマ漫画は、企画・ネタ集め・執筆から4コマのキャラクター画像の加工まで、AI活用を検証しながら制作しています。しかもこの企画自体、実際にPC WRAPで販売している中古パソコンの実機を使って進めています。つまり「中古パソコンでどこまでAI活用を突き詰められるか」を、この連載そのものが実証しているわけです。
使用PCのスペック
- CPU:Core i5(第8世代)
- メモリ:8GB
- グラフィック:Intel Graphics(オンボード)
「中古パソコンでもAIって使えるの?」という疑問について
「AIを使うなら高性能な新品パソコンが必要では?」と思う方も多いかもしれません。ですが、ChatGPTやGeminiのような生成AIツールの多くはインターネット上(クラウド)で処理される仕組みのため、パソコン本体の性能への依存は大きくありません。ブラウザが動き、通信環境が安定していれば、中古パソコンでも問題なく使えるケースがほとんどです。詳しくはPC WRAPの初心者向けガイドでも紹介しています。
実際にどこまで動くのかは、PC WRAPの店長とPCラッコが動画で検証しました。メモリ8GBの中古パソコン(この連載のPCとは別の、Core i5 第10世代の機種)で、ブラウザ・YouTube・Word・Excel・Teamsに加えて、Copilot・ChatGPT・Geminiを全部同時に開いても、普通に動きました。パソコンの中でAIを動かしたい場合(Ollamaなど)は、16GBのモデルがおすすめという結果です。
次回予告
次回も、9つの困りごとのうち別の1つに取り組みます。9つのうち7つまで来ましたが、社内の困りごとはまだ残っています。
決まったことを社内で共有する仕事は、一人ひとりがパソコンを使える環境があってこそ回ります。会社や事務所でパソコンの台数を増やしたい、まとめて入れ替えたいという方は、PC WRAPの法人様向けのご案内ものぞいてみてください。
それでは、また次回の「中古パソコンショップが本気でAI活用に取り組んでみた」でお会いしましょう。
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